排外主義の行き着くところ −容認・実行させる大人たち− - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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排外主義の行き着くところ −容認・実行させる大人たち−

【投稿日】2013年7月5日(金)

昨今、いわゆる【排外デモ】が過激化するなかで、衝撃的な映像が各国で報道されている。

「日本人の10代少女がコリアンの虐殺を訴える」といった内容である。

この排外デモは2月24日に大阪の鶴橋で行われたもので、4月2日にCNNのiReportが取り上げて以降、Japan Daily Press、ロケットニュース英語版、台湾、中国、カナダ、イギリス、オランダ、ペルーと各国で取り上げられている。

その内容は以下の通り。

「鶴橋に住んでいる在日クソチョンコの皆さん、そして今ここにいる日本人の皆さん、こんにちは。私は(在日の)みなさんが、ほんま憎くて憎くてたまらないんです。もう殺してあげたい。

いつまでも調子に乗っとったら、南京大虐殺じゃなくて鶴橋大虐殺を実行しますよ。日本人の怒りが爆発したら、それぐらいしますよ。大虐殺を実行しますよ。

実行される前に自国に戻って下さい。ここは日本です。朝鮮半島ではありません。いいかげんに帰れ」

この少女が勇ましく「虐殺を実行」すると叫ぶと、周りの大人たちが「そうだ!!そうだ!!」と大声で賛同する。

ついに排外主義者たちは子どもを利用するまでになった。

教育次第で子どもたちはいくらでもレイシストになるのだ。

この映像は世界中を駆け巡った。

彼女のこれからが心配ではあるが、なんとも許し難いのは、周りの大人たちである。

さらにおぞましいのは、その様子を知らぬ顔で《公務》に励む警察官の姿である。

東京・新大久保で排外デモが公然と行われている中で、民族の祭典であるオリンピックを招致する資格が今の東京にあるのかどうかをある記者に質問された東京都の猪瀬都知事は、

「デモは届け出をして手続きをやれば、できることはできる。人を傷つけるなどしなければ、とりあえずは合法活動ということになる」とし、「東京の1300万人のうちのわずか200人」程度のもので、法律がないから見守るしかないと、排外デモにたいして積極的に対処する気持ちがないことを表明している。

猪瀬氏は、副知事時代、日比谷公園での反原発デモを認めない当時の石原都知事を支持した。

にもかかわらず排外デモは「合法だから見守る」としている。

反原発の「表現の自由」は敵視し、「差別表現の自由」には「寛容」というのが、彼のスタイルだ。

さらに、4月28日のニューヨークタイムズのインタビューで、オリンピック招致で対抗する都市を中傷。

「イスラム圏の国々は、共有するものはアラーだけであり、お互いに殺しあってる。さらに階級制度もある。」

「イスタンブールは東京に劣る」

など民族差別体質まるだしの発言を行った(本人はそういう意図はないと否定)。

日本の首都の代表者が民族差別主義者なのだから、排外デモが頻発してもなんら不思議ではないということだ。そしてそれを支えるのは東京都民なのである。

このような構造の上に今の排外主義が支えられている。これが暴走すればこのような少女を生みだし、その行き着く先は、まさに「大虐殺」だ。

今年は関東大震災朝鮮人虐殺から90年。その東京や神奈川では副読本などから「虐殺」の表現を廃し、その事実をもみ消そうとしている。

このまま排外主義を容認しつづければ、いずれ関東大震災朝鮮人虐殺のような悲劇が繰り返されかねないことに危機感を抱く。(K)

※ KMJ通信62号掲載分を編集しました。