【投稿日】2024年3月20日(水)
政府は「永住者」の在留資格を持つ外国籍住民に対して、故意に税金や社会保険料の未納・滞納を繰り返した場合や1年以下の懲役や禁錮刑になった場合に、永住許可の取り消しや資格変更をできるよう、現行の入管難民法を改正するとの方針を示しています。日本で中長期的に暮らす外国人の増加が見込まれる中、制度の「適正化」を図ることをその目的とし、今国会に改正案を提出するようです。
KMJは今回の入管難民法改正案が、現在の「永住者」や、今後「永住」資格を申請しようとしている外国籍住民の法的地位を著しく不安定なものにすること、および、「永住者」の一部には、戦後の混乱期に、さまざまな事情で「特別永住」の在留資格を得られなかった「旧植民地出身者とその子孫」が存在しており、日本による朝鮮植民地支配の歴史的責任を鑑みても、本改正案は理不尽なものであることから、強く反対します。
政府の言う制度の「適正化」とは、2月に開催された「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」において、技能実習制度に代わる新制度「育成就労」を創設すれば、「永住に繋がる特定技能制度による外国人の受入数が増加することが予想される」ので、永住許可要件を一層明確化し、当該要件を満たさなくなった場合に永住許可を取り消すことができるようにするとしています。また、出入国在留管理庁は、永住者が故意に納税などを怠る事例があるとして問題視しているそうです。
しかし、税金や社会保険料の滞納、退去強制事由に該当しない軽微な法令違反に対しては、日本国籍者に対するのと同様に法律に従って督促、差押、行政罰や刑罰といったペナルティを課せば十分なはずです。また現入管難民法では、申請時に虚偽があった場合等には永住者であっても在留資格取消の対象になり、一定の刑罰法令違反等があった場合には退去強制の対象になります。
病気や失業、社会の変化等により許可時の生計要件を満たさなくなったり、収入の減少や手続のミス等により税金や社会保険料を滞納してしまうといったことは、誰にでも起こり得ることです。そのことで在留資格が取り消されるとすれば、外国籍住民は安心して生活していくことはできません。
そして、本改正案は、永住者であっても、経済的に困窮したり、わずかな過ちがあった場合は、生活の基盤を奪われても仕方ないと政府自身がお墨付きを与えることになりかねません。日本社会にはまだまだ外国籍住民にたいする排外主義的風潮が蔓延っていおり、彼/彼女らに対する差別・偏見がますます助長されるのではないかと危惧します。
以上から、本改正案は、政府が目指しているはずの「共生社会の実現」に逆行するものであり、差別・偏見を助長するものであることから、改めて強く反対します。そして、外国籍住民が安心して暮らせるための基本法を策定するよう求めます。