純血?もとめる圧力がうみだした差別     民進党の蓮舫前代表の「戸籍開示」問題 - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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純血?もとめる圧力がうみだした差別 民進党の蓮舫前代表の「戸籍開示」問題

【投稿日】2017年8月7日(月)

 民進党の蓮舫前代表が「二重国籍」問題を説明するために自身の戸籍謄本の一部を公開した(7/18)。この問題は昨年9月に一時メディアを賑わせたが、すでに世間では忘れさられた話題であった。それを東京都議選惨敗の責任を問うた身内からの突き上げや、産経などの右派メディアによって蒸し返される形での公開となったようだ。
 蓮舫氏は戸籍謄本の公開にあたって「私が1人の政治家を超えて、より強く説明責任を求められる公党の代表としての立場を勘案した」とし、「親や本人の国籍、出自など、日本人と違うことを見つけ、違わないということを戸籍で示せと強要することがない社会をつくっていきたい」と説明した。本人はそういう思いのようだが、悪しき前例をつくってしまったのではないか。
 
 そもそも、蓮舫氏が二重国籍保持者であったとしても、公職選挙法上まったく問題はない。昨年10月に日本維新の会が「国籍選択をしていない者は被選挙権がない」「管理職公務員になれない」といった内容の法案を出したが、審議未了で廃案となった。こうした法案が出されること自体、現在の法律では日本国籍以外に外国国籍を持っていても、それは政治家や国家公務員の欠格事由にはならないことが分かる。(ただし、外交官だけは、外交特権との関係で二重国籍が欠格事由とされている)。したがって、蓮舫氏はあえて自身が二重国籍者でないことを戸籍謄本を示してまで説明する必要などまったくなかったのである。それはおそらく本人も承知のことだったであろう。
 
 では何が彼女をそこまで追いつめたのか?それは日本社会に潜在する、いまだ解消されない「純血」をもとめる悪しき社会意識であり社会構造である。

 今回、蓮舫氏が自身の戸籍謄本を公開したという前例をつくってしまったことで、日本国籍取得者(帰化者)やダブルなどの者たちが、様々な場面で、「純血主義」によって、戸籍謄本などの全面開示を求める圧力にさらされることになるのではないか。そしてそれが当たり前のことと認識されてしまうことに危機感を感じる。

 かつて被差別部落の所在地を示した「部落地名総監」を多くの企業人事担当者が購入し、就職希望者の採用などに利用していたという重大な部落差別事件があった(1975年)。部落解放同盟などによる厳しい糾弾闘争により、啓発・研修、条例の制定などのルールづくりが行われ、身元調査が差別につながることが周知されてきた。それでも、身元を暴くという差別行為は、あらゆる場面で行われており、1998年に大阪で発覚したI社・R社による差別調査事件では、出身地だけでなく、家族、宗教、思想、支持政党、そして民族もその調査対象とされていたことが明らかになり、大問題になったことは記憶に新しい。
 在日コリアンが根強い民族差別と世代交代に伴う同化現象のなかで、通称名が一般的となり、日本国籍取得者(帰化者)が増加し、自ら語らなければ在日であることが他者にはわからないという状況になっている中で、日本の純血主義はそれを許さない。代議士であった新井将敬氏が選挙の際に、「帰化」したことを示す戸籍を相手側にばらまかれたこともあった。

 必要以上に身元を明らかにするということをまかり通らせてはならない。今回の蓮舫氏の行動はあまりにも軽率すぎたが、そうさせた背景をもっと明らかにし、批判していかねばならない。(高敬一)