排外主義を全面的にかかげた「希望の党」の外国人地方参政権排除に抗議します - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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排外主義を全面的にかかげた「希望の党」の外国人地方参政権排除に抗議します

【投稿日】2017年10月12日(木)

 いま話題の小池百合子東京都知事が党首をつとめる「希望の党」の、民進党議員などの公認候補に承諾を求める「政策協定書」の内容が明らかになりました。その内容は安保法制の容認や憲法改正の支持など全10項目ですが、その1項目に「外国人に対する地方参政権の付与に反対」という項目が入っていました。

 「寛容な保守」をかかげ、「ダイバーシティー」(多様性)を重視すると表面上は語っている小池氏ですが、実際は、都知事就任直後に、前知事が韓国政府と約束していた都立高校跡地の韓国人学校への貸与を白紙撤回したり、毎年9月1日に行われている関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文送付を断るなど、その排外主義的な姿勢をあらわにしています。

 そもそも小池氏は昨年7月の都知事選に際し、「3つの新しい東京(=シティ)を作る」とした公約の2つ目として、「ダイバー・シティ」をかかげた際、「女性も、男性も、子どもも、シニアも、障がい者もいきいき生活できる、活躍できる都市・東京」と語りましたが、あえて「外国人」は排除しました。そういった意味では今回の政策協定書に「外国人に対する地方参政権の付与に反対」という項目が入っていたとしても何ら不思議ではありません。

 外国人地方参政権問題は1980年代頃から2000年にかけて、市民団体や韓国民団などが法廷闘争やロビー活動などを通じて積極的な獲得運動が展開され、国会でも2007年までに審議、廃案、再提出が繰り返されましたが、成立することはありませんでした。以降、運動も下火になり、ここ10年間は政治の場でも争点になっていません。それなのに、いま、あえてなぜこの項目を入れたのでしょうか。

 ひとつは旧民主党が1998年の結党時に基本政策として「定住外国人の地方参政権の早期実現」を掲げていたことと関係するでしょう。リベラル派の旧民主党議員への踏み絵であり、選別・排除するためです。
 もうひとつは、韓東賢さんが指摘するように、外国人地方参政権問題は、国政における定住外国人、それもとくに過去の歴史的経緯との関係で日本に定住することになった、在日コリアンなどのオールドカマー外国人との多文化共生指向のメルクマールであったことに関係するでしょう。過去の戦争や朝鮮・台湾の植民地支配を正当化し、美化する一部の保守層や排外主義者にとっては、過去の歴史経緯と絡んでくる戦後補償や在日コリアンの権利保障などの問題は、忌み嫌うべきものでしかありません。その象徴ともいうべき外国人の地方参政権付与反対をあえてここで示すことで、自民党支持者に多い保守層の引きはがしをねらったのでしょう。

 このような党利党略で在日コリアンの人権政策課題であり、多文化共生志向のメルクマールである地方参政権問題を利用したことに対し、KMJは厳重に抗議します。そして今回の「希望の党」の外国人地方参政権排除は、排外主義がはびこる現在の日本社会で、偏狭なナショナリズムやレイシズムを強烈に煽る行為であると言わざるをえません。これは200万人以上の外国人が住み、少子高齢化のなかで、外国人の力が必要となっている日本の社会状況に逆行する行為です。ただちに白紙撤回を求めます。