【投稿日】2019年1月4日(金)
2019年を会員、読者のみなさんはどんな気持ちでお迎えだろうか。それぞれの立場、お仕事、ご家族のこと、健康のこと、課題はいろいろおありだろうがことは十分に推察できるし、また推察しなければならない。その上でのことになるが、私にはすくなくとも2019年は三つの大きな課題が私達の前に立ちはだかっている、と思う。
その一つはいうまでもないことだが、朝鮮半島をめぐる情勢のなりゆきである。果たして金正恩委員長のソウル訪問は実現するのだろうか。その実現には韓国内のさまざまな勢力のせめぎあいを克服しつつ、国論をまとめあげねばならない文大統領の手腕がためされよう。また金委員長の対話路線にかける熱意と国内外の今後の情勢打開にかける見通しも外交政策の実現に成否にかかわることだろう。さらにアメリカのトランプ大統領の朝鮮問題打開にかかわる本気度も問われる。日本の安倍政権の去就についてはいうべき言葉もない。ただ対話路線を妨害するな、というにとどめよう。
二つめの課題は2018年末の改正入管法の成立だ。みなさまも恐らく同様の感想をお持ちのことと思うが、あの法の国会での審議過程では与野党の発言とも、現法以上に当事者である人々の人権にかかわる問題である、という見解がなかったことである。世界のどこに家族との別離生活を強制する政策をとる国家があるだろうか。また日本のメディアも政府提案用語どおり「外国人材」と表現しても「外国からの労働者」とはいわない。
要するに「人」として受け入れる気持ちが皆無なのだ。そのことは戦前の大日本帝国の徴用工をはじめ、さまざまな強制をともなった「むりやり移住」によって生産現場や大規模な現場労働に朝鮮、台湾出身者を大動員した歴史と重なる。またこの問題を国会での一目に触れる機会を封じて、行政官庁の権限のもとで「政令」の範囲で扱う、という政府のおごりの姿勢だけでなく、彼・彼女たちの人権問題であることを日本人一般の目からみえないようにしておく、という陰謀でもある。
三つめはいうまでもなく憲法問題である。「功」にはやる安倍はオリンピック・パラリンピック開催、天皇退位と新天皇即位、そして大阪万博実現に道筋をつけた「大功労者」の上にさらに改憲を実現して「歴史に残る大宰相」の名を目指しているに違いない。そのためにはあらゆる手練手管を用い、沖縄の人々の意思を無視しつづけて改憲によって「戦争のできる国」に仕立てたいのだ。だが悲観だけはすまい。やがて「安倍政治の6年間」は日本とアジアにとっての「恥の歴史」であったことを後世の人々の英知は知ってくれるだろう。(仲尾宏理事長)