【投稿日】2019年3月12日(火)
国会で入管法ならびに難民認定法の改定が法案の中身の審議をいい加減にしたまま、強行採決された。その法案の内実をみるや、唖然とする。しかし現行法の下での最大の問題は「技能実習制度」である。ベトナム、中国、フィリピン、インドネシアなどから約27万人が渡日してさまざまな職種で働いている。法の目的は一定期間の技能実習で母国での就労に役立つ技能を習得してもらう、という触れ込みだが、実態は単純な労働に毎日長時間働かせ放題という。その例をあげると私たちが日常口にするコンビニ食品などの加工、包装などの職種、農業、漁業、繊維、衣服、機械・金属などの単純・末端労働などである。その多くは帰国後の就労に役立つとは思えない。建設現場でも末端の危険ないわゆる「3K労働」にのみ就労させる。しかも最低賃金法の規定をはるかに下回る賃金で長時間働かせた上に残業賃金もロクに支給しない。だから彼/彼女らは極度の疲労の果てに脱走し、「不法滞在」となり、中には暴力団の食い物にされてしまう。今度の改定ではこのシステムの非人道的な制度を見逃した上に、「特定技能」という新資格をつくって、最長5年(更新可能)の新資格をもうけた。この制度の最大の狙いはかかる悲惨な労働現場を見て見ぬふりをしつつ、日本企業の利益に発展途上国の人々をさらに搾取しようと目論んでいることである。これはかつての在日コリアン一世の労働現場とそっくりではないか。アボジたちは家族を帯同して来日してくる余裕もなく、日本語もよく理解できぬ日本で奴隷的な境遇に陥れられた。違いはかつては日本の官憲の強制力がそのような行為の先頭に立っていたのが今回は「監理団体」というまやかしの民間団体にさまざまな「不法行為」の実効とその責任を負わせていることだ。私たちはかつて国策の名のもとでの悲惨な歴史を知っている。そのゆえにこそ、この現実から目を逸らしてはならない。
新設の「特定技能1号」にしても家族の帯同は許可しない、という。それは家族との生活をみたすに足る賃金ではないからだ。しかし世界のどこに家族との共同生活を許さない社会が存在しているのか。アボジたちはやがて渡日後に家族をもち、また少しの余裕ができた後に郷里から家族を呼び寄せた人たちもいた。ところが今回の法ではそれを許さない、という。労働現場の過酷な処遇とともに、このような非人道的な規制がゆるされてよいのか。
もう一つの問題は、この法制が今まで同様に法務省の所管であることだ。法の対象が労働や福祉、教育の問題にまたがることがらである以上、どうしてその所管を厚生労働省としないのか。ここにもこの法の過ちがみてとれる。
これらの過酷な待遇や条件はやがて国連の人権機関などからも厳しい指弾を受けるだろう。しかし私たちは朝鮮半島の植民地支配下におきたさまざまな非人道的な政策の実態を知ってるが故に「ひとごと」として見過ごしてはならないのだ。(仲尾宏理事長)