参政権の獲得を再度めざします - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

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参政権の獲得を再度めざします

【投稿日】2020年2月10日(月)

 今年で80を迎えることになりました。しかしまだまだやり残していることがありますので、まずはしっかりと健康管理をしていきたいと思います。さて、戦後75年が経過しました。市民運動などの力により、私たち在日コリアンの人権状況は一定の前進をみせてきました。しかし、まだまだ積み残された課題は多くあります。その最大の課題は参政権であると考えています。

 私の両親は日本の朝鮮植民地支配の結果、日本人にさせられ、私も生まれたときは日本人でした。それが知らぬ間に日本国籍を剥奪され、無権利の状態に押しやられてきました。いまや当事者ですらこのような状態が当たり前のように思わされているように感じます。私も以前はそうでした。しかし、30年以上前に、KMJと出会い、ここで学ぶことで、私たちがいかに隷属的な状態にあるのか、歴史的背景をもつ私たちには当然、諸権利が与えられるべきであり、運動によって変えていかなければならないと実感してきました。ヘイトスピーチなど個別具体的な課題はまだまだありますが、私は在日コリアンにとって参政権こそがもっとも重要な課題であると思います。そして在日コリアンに参政権が付与されることは、日本社会が真の民主主義国家になることでもあると考えます。

 「美しい国 日本」をスローガンとする現政権の背景には、自分たちだけの国にしたい、という排外主義的発想に溢れています。しかし、本当に美しい、住みよい日本にするには、さまざま立場の人々が、さまざまな意見を自由に言える、多様性のある状況を創りだすことではないでしょうか。そして、日本社会の現実は、多くの外国人が来日、定住するようになり、一方で、国際結婚によるダブルの子どもたちが増え続けているのです。このような現実に気づいていない、気づこうとしないのが今の日本社会です。この状況を変えるための参政権なのです。日本社会に、人間として認められていない、隷属的状況に置かれている人たちが、あなたの目の前にいるということを、知らしめていかないといけないのです。そのための啓発をやってはきましたが、それだけではもう限界がきています。そのために司法に訴えていくことが必要であると考えています。20数年前に、各地で永住外国人の地方参政権をもとめる裁判闘争が行われました。その結果、永住外国人に選挙権、被選挙権を付与することは「憲法上許容される」との画期的な判決を得ることができました。しかし、いまだに実現されていません。この状況を打破する最後の手段として、再度、司法に訴える。国連の人種差別撤廃委員会でも私たちには当然、参政権が与えられるべきとの勧告が出されています。現状、司法は現政権の意向を汲むでしょうから、勝算は厳しいのは目に見えています。しかし、いま行動をおこさないと、もう5年、10年すれば、在日も世代交代や同化が進み、誰も声を上げなくなるように思います。そして日本社会は、朝鮮植民地支配の結果生み出した在日コリアンの最大の人権問題である参政権を付与しないという最大の罪を犯したまま、それを風化させるという汚点を歴史に遺すことになるでしょう。ですから、これからの日本社会のためにも参政権の問題を声に挙げないといけないのです。

 それからもう一つ。今後ますます増えて行くであろう、日本籍コリアンのことです。彼/彼女たちに、コリアにルーツがあるということを、しっかり意識してもらう取り組みが必要であると考えます。放置しておくと、そのまま風化し、同化していくことでしょう。彼/彼女たちが、ルーツを大切にし、意識できる社会にすること。そして、彼/彼女たちがルーツを意識しながら、日本の政治に参画すること。市会議員や国会議員になって、在日コリアンをはじめとする外国人も大切にできる政党をつくって、活躍してほしい。これこそ真の民主主義に繋がるのではないでしょうか。そのような人材を育成していきたいと考えています。

 日本籍コリアンが政治に参画し、旧植民地出身者とその子孫である私たちが参政権獲得のために声を挙げる。このような志を共にできる仲間をもっと集めて、今年は具体的な行動に移していきたいと思います。(呉時宗副理事長)