すべての人々に給付金の支給を!! - 一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター

記事詳細

すべての人々に給付金の支給を!!

【投稿日】2020年5月14日(木)

 今、世界を覆っている新型コロナウイルスによる発病ないし発症にかかわる給付金の支給について、安倍内閣は当初の一部の人々や事業体に対する協力金支給方針を変更して、すべての市民に対して一律10万円の支給(特別定額給付金)に変更して給付することとした。支給時期ははやくても5月下旬ということだが当然の措置である。

 この措置は日本国憲法第25条にいう全市民に対する「健康で文化的な生活の保障」からして当然のことである。私がおそれていたのは、このときまたも「国籍条項」を持ち出して日本国籍をもたない人々を排除する挙にでるのではないか、ということであった。政府によると、外国人でも住民基本台帳(外国人住民票)に登録されていれば支給対象となるが、それ以外の短期滞在者や、非正規滞在の外国人、難民認定申請から8カ月未満の人や、難民認定申請中であるものの在留資格を失った人たちは特別定額給付金の対象外となる。ある外国人支援団体は「国境が封鎖される状況下、こうした人たちは経済的困窮に陥りつつある。感染者が日々増加する中、人権面からはもちろん、感染リスク低減のためにも、すべての人に給付すべき」と訴えている。まさしくその通りである。

 社会保障の分野ではすでに生活保護法をはじめ、なんらかの事情により生計を一人で維持できなくなった人、疾病のために療養、介護の必要のある人々に対しては国がその生命の維持や最低限の生活維持のために必要な施策を講ずることとされて法が整備されている。今回のような国土の全域を覆う大災害の発生については政府や行政が全責任を負って、その解決にあたることは当然の責務である。

 とくに外国籍者の場合には情報の不足、または母国語で対応してもらえる医療機関の少なさによって、平時でも一度も受診した経験のない子どももいれば、家族に病者がでても仕事を続けなければならない人、あるいは勤務先からの解雇や倒産などの社会的災害に見舞われる人も多くでる。小規模なデイサービス機関の経営が維持できなくなる場合もあろう。無認可の外国人学校・保育所や社会福祉機関も然りであろう。

 またこのような当然の社会的対応に反発してヘイト団体が排外的な広報活動やデマをまき散らすことも出てくる。そのような活動を許さないことは当然であるが、もう一つはそれぞれの地域や身近な人びとがそのような社会的弱者の存在に気づくこと、そして気がつけば援助の手をさしのべることからはじめたい。
 そのほか給付金の申請方法、生活保護世帯の場合の給付の可能性、職場の確保、事業主との交渉の立ち会いなどである。

 かつてリーマンショックの時に日本政府は30万円の旅費相当額を支給して多くの外国人労働者とその家族を事実上、追放した。そのような愚かなことを二度と繰り返してはならない。そして支給対象外となっているすべての人々にも支給すべきである。いまこそ「多文化共生」の日本の真価が問われている。(仲尾宏理事長)