【投稿日】2020年12月17日(木)
11月1日に大阪市を廃止し、特別区を設置するという、私たち大阪市民にとっては、生活スタイルを大いに変容させる大変重要な住民投票が行われた。5年前に否決され、今回は2回目の住民投票だったが、私たち外国籍住民は、前回に引き続き今回も投票には参加できなかった。この件ついて、大阪市の松井市長は、「投票に参加したければ日本国籍を取っていただきたい」と記者に対して答えたそうだ。
現在、公職選挙法で、選挙人名簿に登録されるのは「18歳以上の日本国民」と定められており、外国籍住民は国政・地方とも参政権はない。ところが、「諮問型住民投票」の場合は、公職選挙法の適用を受けないため、投票人は自治体の判断で決めることができることから、2002年滋賀県米原市が、全国ではじめて住民投票に外国籍住民をその対象とした。以降、現在まで168の自治体で200件以上の住民投票に外国籍住民が参加している。
ところが、今回のように特別区を設置するためには、2012年に大阪維新の会などが中心となって提案し、立法化された「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(以下、大都市法)および「大都市地域における特別区の設置に関する法律施行令」に基づいて行われる。これを「拘束型住民投票」という。この法律では、投票の主体者は公職選挙法の規定に基づく「選挙人」つまり「18歳以上の日本国民」と規定しているため、外国籍住民は今住民投票から排除されることになったわけだ。おそらくこの法律で規定されていなければ、今回の住民当投票にも外国籍住民が参加できる可能性はあっただろう。 一度制定された法律を変えるのは難しい。外国籍住民が投票に参加できないことに疑問をいだいた日本人市民たちが、法改正を求めて請願活動などを行ったが、とても間に合わなかった。
そもそも2012年に制定されたこの法律で、なぜわざわざ住民投票の対象者を「公職選挙法」に基づく「選挙人」としたのか。各自治体の住民投票に外国籍住民が参加していることを、快く思ってない者たちが背後にいることは想像に難くない。現に、2011年の第176回臨時国会において、浜田和幸元参議院議員(自民党ほか)が、「住民投票条例に基づく外国人の投票権」について、それを問題視する趣旨の質問を行っている。大都市法設置の背景には、各自治体で広がりを見せていた住民投票での外国籍住民の参加に、ブレーキをかける意図が見え隠れする。それほどに、日本の保守とされる人々にとっては、外国人が参政権のみならず、住民投票にすら参加することに、抵抗感以上の嫌悪感を抱くようだ。「国防上の問題」であるとか、その「国籍国の言いなりになってしまう」とか、酷いところでは「国体が護持できなくなる」とか、ありもしない妄想を肥大化させ、危機感を煽るが、結局は、心の内にある「外国人嫌悪」「排外主義」そして「単一民族思想」をさらけ出しているだけである。そして、そういった人々が、ヘイトスピーチに代表される民族差別を支え、「奴隷」的な外国人労働システムを構築、維持しているのである。
しかし、そんなことでいいわけはない。為政者は認めないが、もはや日本は「移民社会」である。外国人との共存なくして、日本の未来はない、と言っても過言ではない。地方自治が重視される中で、外国籍住民も一体となって社会を築いていかなくては立ち行かなくなる。そのために参政権があたりまえの権利として認められなければならない。そして、それは行き詰まった日本の民主主義に風穴をあける効果もあるものと考える。外国籍住民のためではなく、日本社会のための外国人参政権なのである。(高敬一)