【投稿日】2021年1月8日(金)
昨年の11月に大阪市では大阪維新の会主導の「大阪都構想」なるものの賛否を問う住民投票が実施された。結果は大阪市住民の多数の反対によって否決され、松井市長は任期満了をもって退任する、と声明した。二度もいい加減な構想をぶちあげ、巨費を投じてそれを実施した責任は大きい。いまその行為自体の意味を問うことの時間はないが、問題の最大のひとつは投票の有権者から在日コリアンの意思行為の参画を奪ったことである。
よく知られているように大阪は日本最大の在日コリアンの居住地であり、彼・彼女たちの政治の機会を奪っていることの不合理はいうまでもない。それをまたしても大阪府と市は当然のように行ったことについては何ら痛痒を感じてもいない。またほとんどの政党や政治家たちもそれを問題視していない。ごく一部をのぞいてマスコミもとりあげようとはせず、多くの日本人有識者も声をあげなかった。そんな不条理がまたもや当然のこととして通用してしまったのである。ことのおこりは日本の敗戦にともない、日本に居住する戸籍を有しない市民、すなわち朝鮮人・台湾人などの選挙権・被選挙権を「当分の間」停止するとした議会の決議にある。1952年のサンフランシスコ対日講和条約の締結時に、法務当局によって在日朝鮮人・台湾人は非日本国籍者として外国人登録法の対象とされ、参政権資格を剥奪された。特別永住者資格の始まりはここにある。
その結果、在日はあらゆる公職選挙法の有権者としての権利を奪われ続けてきた。それは公職選挙法に定める選挙だけではなく、さまざまな地方自治体による「住民」としての権利にかかわる投票権についても参画をゆるさない事例を招き続けた。このたび、および前回の大阪市民の投票権についてもこの例によったものであろう。
だが住民投票についてはその投票権を認めた例もある。それは滋賀県米原市が2002年3月に町村合併を巡る住民投票で住民登録後、3ヶ月を経た市民にその投票権を認めたもので、住民の関心も投票率も高かった例である。そして現在も条例を改正したが、外国籍市民の投票権はそのまま維持されている、という(同市総務課)。以降、各自治体で行われた200件近くの住民投票に外国籍者が参加している。
公職選挙法については、在日を始めとする当事者から再三の提訴があったにもかかわらず、最高裁判所でその上告ははばまれている。
外国ではどうか。まず国籍については日本のように国籍を純粋な血統にある、とする国は必ずしも多数派ではなく、生地主義との併用、または国籍取得要件も緩やかである国も少くはない。その理由は国籍は法によって定めることであるにしても国籍を人が持つ「権利」としての側面を重視しているからであろう。日本の法律家や政治家にはそのような認識は圧倒的に少ない。しかし日本も承認または批准している国連人種差別撤廃条約で、その委員会は、2018年に在日コリアンに「地方参政権を付与」するよう日本政府に勧告、来年の自由権規約委員会でも同様の勧告がなされる予定である。ここでもまたもや日本は「立ち後れた人権小国」の汚名を受けるのであろうか。次の衆議院選挙は間近に迫っている。新年を迎えて、またもや大きな課題が突きつけられている。(仲尾宏理事長)
★ちなみに在日に対する参政権「不授与」に賛成している党派は自民、維新などである。国民民主の玉木代表は「反対」を明言している。立憲民主は党としての明言はない。