【投稿日】2020年4月1日(水)
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、ウイルスの発信源が中国であったことから、主として中国人をターゲットとした民族差別事件が各地域で発生しています。1月下旬頃から、中国人観光客の入店を拒否する飲食店が続出しました。2月17日、香川県の公立小学校に「中国人を親に持つ子どもを登校させるな」という内容のハガキが送られました。政治団体「日本第一党」は2月29日、東京・銀座で中国人や在日コリアンを排斥する差別扇動デモを行いました。3月4日、横浜中華街の複数の店舗に「中国人はゴミだ!細菌だ!」などと誹謗中傷する封書が送らました。差別の目は中国人だけでなく、在日コリアンにも向けられています。3月9日には、「川崎ふれあい館」のごみ集積場に模造刀と木刀が並べられ、同日、さいたま市は市の蓄用マスクの配布から朝鮮幼稚園を除外しました。これらの事象は氷山の一角であろうと想像できます。
世界的に新型コロナウィルスの感染が拡大する中、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、その対策において、「人権が最前線かつ中心におかれる必要がある」と述べています。彼女は「包括的なアプローチをとることなしには、ウイルスを撃退するための私たちの努力は実を結ばないだろう。それは、社会において最も脆弱で無視されがちな人々を、医療的にも経済的にも確実に保護することを意味する」と指摘し、社会のなかで脆弱な立場におかれた人びとへの対応に注意を払うよう求めました。さらに、政府機関が、民族差別などにかかわる出来事にたいして必要な措置をとることを求めています。
災害などの社会不安が拡大するとき、差別が拡大・強化されます。日本政府や地方自治体は、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官の言葉を肝に銘じて、新型コロナウイルスの感染拡大対策だけでなく、包括的な人権政策を講じる必要があります。
しかし残念ながら、今のところ、日本政府や地方自治体に、そのような視点は皆無と言えます。むしろ、市民の不安感をマイノリティに対する警戒心や猜疑心にすり替えてしまおう、としているのではないかと懸念します。現在、国会では緊急経済対策として、各世帯に現金給付もしくは商品券の配布が検討されていますが、これらが日本国籍者に限定されるのではないかと懸念します。かつて「地域振興券」の配布対象者は、当初、日本国籍者に限定されていました。また、日本政府は、中国・武漢に派遣したチャーター機の搭乗要件を日本国籍者に限定しました。日本に永住する外国人の存在を無視したのです。
以上から、私たちは、日本政府や地方自治体に対し、新型コロナウイルスの感染拡大による社会不安と結びついた民族差別や排外主義は許さないという明確な姿勢を示すこと、また、新型コロナウイルス対策のあるゆる施策から、在日外国人を排除せず、むしろ積極的に保護すること求めます。
2020年4月1日
一般社団法人在日コリアン・マイノリティー人権研究センター(KMJ)